***  9月の詩  ***

戻る


 名もなき祈り


こずえの窪みに
雨水がたまる

はなれた葉が
少しずつつもる

だれかが小石を
ひとつずつ入れる

風が吹いて
風が止まり

迷ったひかりが
わずかの時間
切り裂くように
とおりすぎる

クロアゲハが
ふちにとまり
すぐそばの枝で
法師ゼミが鳴きだす

遠くで犬がほえている
空に近く鳥の声がひびく

こずえの窪みの
雨水がゆれる

緑の光がにじみ
輪郭を溶かしてゆく

笑みはいらない
抱擁もいらない

ことばは眠ったまま
なみだは溶けたまま

いつかかならず
名もなき祈りになる
名もなき祈りになる









9月の詩 名もなき祈り

Copyright© 2014 Shiawase no Kijun