***  11月の詩  ***

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 わたしは羽


わたしは羽
鳥のからだから抜け落ちた羽
大空をはばたくときの

わたしは羽
どんなときでも空を飛んでいた
風を切り大きな森もみおろした

わたしは羽
けれどある日突然役目を終え
風もない朝に森に捨てられた

わたしは羽
このまま地面に着いて
静かに土に埋もれるのだろうか

わたしは羽
けれど地面におりるその前に
一本の樹の幹に抱きとめられた

わたしは羽
ごつごつした樹の肌は痛そうだったが
ひなたのようなあたたかさだった

わたしは羽
樹の幹はなにも語らずわたしを乗せ
雨からも風からも守られ続けた

わたしは羽
樹の幹はやがて盛り上がり
抱かれたわたしは包まれていった

わたしは羽
いまはいつでも樹と一緒にいる
森を巡る風にやさしく話しかけられ

わたしは羽
空に舞う鳥の母から離れ
大地の樹の母の子どもになった
わたしは羽









11月の詩 わたしは羽

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