***  7月の詩  ***

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 カサブランカ


かけあわせて
限りなくかがやきになった
まるで光の交配のように

だれもがあこがれる
東洋の小さな島国由来の家
あなたの沈黙はそこで生まれた

夢はおしべの花粉とおなじ
知らず知らずに
こころのどこかについて
たとえ洗い落とそうとしても
いつまでも色が消えない

色は光ではないのだから
年月を重ねれば重ねるほど
薄汚れて初めの色はもう忘れた

おもいだしてください
おもいだしてください
あなたという名の
ましろな家

こころの色の重なり具合が
限りなく黒に近づく頃
だれもこの花が
まぶしくて
まぶしくて
生まれた家をたずねたくなる

この七夕過ぎの夕暮れどき
ほのかに浮かぶ路地のすみ
罪を浄化する遍路のように
あなたが取り戻したのは

カサブランカよ
もう一度教えておくれ
うまれたときの夢のかたち
うまれたときの空の色
うまれたときの母のことば









7月の詩 カサブランカ

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