***  2月の詩  ***

戻る


 光の春


陽だまりのふわりとした匂い
まだ固い芽の枝の先端に
光の鳥たちが羽を休めている

寒さはいのちの輪郭を
鋭い境界線で凍らせていたが
寄り添うようにつぶやく明るさ

もうひとつ角を曲がれば
今日の目的地につくのだけれど
この光たちともう少し触れていたい

どこまでがほんとうで
どこからが夢を見ていた自分なのか
気がつかないことは

いけないことではなくて
むしろ楽しいことなのだと
だれかに話すことはできないのだろうか

目をふせることで
やわらかな光のあたたかさを
抱かれるように感じていたのは

いつまでもやってこない
春のおとのいをこいねがう
あきらめにも似たため息なのだろうか

ふっと風の息が潜む
いのちの影がそばをすり抜ける
積み重ねたかなしさがほぐれ

陽だまりにまじる花の想い
それは眠り続けてまだ咲かぬ
明日を見ているつぼみのつぶやき

光の春 光の春 光の春
おまじないは三度くりかえし
待ち続ける鼓動を大地に溶かすこと









2月の詩 光の春

Copyright© 2016 Shiawase no Kijun