***  8月の詩  ***

戻る


 カワキ


あなたが忘れてしまったから
わたしも忘れてしまっていいのだろうか

あなたがかえりみないから
わたしも捨ててしまっていいのだろうか

熱い風が吹き
強い陽ざしが照りつける
玉になった汗は
一筋に流れ始め
涙のようにあふれてくる

あなたが立ち止まってしまったから
わたしも歩みを止めていいのだろうか

あなたが笑みを捨ててしまったから
わたしも希望をなくしていいのだろうか

乾ききった地面
一匹の黒アリがチョウの羽を運ぶ
空からのしたたりが
記憶から消えて
どのくらいがたったのだろう

あなたが求めなくなったから
わたしも手を差し伸べないでいいのだろうか

あなたが風を呼ばなくなったから
わたしも顔をあげなくていいのだろうか

ふと影がよぎる
光がさえぎられる
耳の底になにかが話しかける
誰かが呼んでいる
あなたではない誰かが

あなたがふっと消える
あなたを見ていたわたしも消える

新しい空間に小さな風がうまれる









8月の詩 カワキ

Copyright© 2016 Shiawase no Kijun