***  1月の詩  ***

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 樹と鳥


樹は羽が欲しかった
季節の変わる風にのって
背にした山を超える羽を

鳥は根が欲しかった
年月が蓄積した大地から
恵みを汲み上げる根を

樹と鳥は
いつも静かに触れあっていた
話をしたことも
笑いあったことも
ただの一度もなかったけれど
鳥の足が樹の枝に触れ
樹の葉が鳥の羽をなでていた

ある日鳥は樹に巣をつくり
小さな卵をあたため始めた
樹は葉で巣を守り
鳥に寄り添い巣を守った

ある日樹に雪が積もった
長い冬の始まりだった
鳥は根元に羽毛を寄せ
落葉とふかふかのふとんにした

やがて卵は雛になり巣立っていった
やがて樹は枝先に小さな芽をつけた

いつか樹は
太い根で守れるものを伝え
そして鳥も
やわらかな羽で包めるものを伝えた

空の風と大地の風は
澄んだ鳴き声と美しい立ち姿を
遥か遠い国へと伝えることだろう









1月の詩 樹と鳥

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