***  4月の詩  ***

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 距離


きみとの距離がわからない
もうずいぶん長いこと
顔見知りだというのに

ぼくが一歩近づくと
きみは一歩後ずさり
ぼくが目をそらしていると
きみは一歩を戻している

冷たい風が吹きすさぶ日も
陽だまりがつつむ日も
凍える雨が濡らす朝も
烏がまどろむけだるい夕も

ふたつの影の距離は
弾むボールの背と腹の距離
声も聞こえるし
匂いもするというのに
触れることすらかなわない

でも風がむず痒いたよりを
きみとぼくの足元に
まるで電報のように
届けはじめたのが始まりさ

雲間からの一筋の陽ざしが
たよりを宝石のように輝かせ
ぼくは思わず一歩近づいた
同時に君も一歩近づいて

ふたりはにっと笑いあい
まるで何もなかったように
新しい距離を受け入れた

きみとの距離はわからない
けれど距離は壁ではなかった

こんなにも微妙で
こんなにも新鮮な
こころが伝わる不思議な距離









4月の詩 距離

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