***  6月の詩  ***

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 呼吸


ほら 風の音が聞こえる
朝いちばんの
生まれたての呼吸を
南からの風が呼んでいる

窓をあけて
空を見あげてごらん
白い雲たちが
背中を押すようにやってくる

軽やかな呼吸が
あの雲に乗りたがっている
強い風切り羽をもった
渡り鳥の胸のように

あなたの呼吸は
どこからやってくる
かなしみもよろこびも
すぐにいっぱいになってしまう
その小さなからだから

まっすぐに見てごらん
見たいものをみてごらん
あなたがふと気になったもの
目をはなせなくなったもの

あなたの呼吸は
いつもさがしている
もっと深くもっと強く
もっと静かなもっと柔らかな

南からの風に乗って
とどまることなく
形を次々とかえてゆく
あの雲のような自在さを

あなたはもう迷わない
朝いちばんの
あなたの呼吸はもう
雲とどこまでいったのだろう









6月の詩 呼吸

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