***  12月の詩  ***

戻る


 ふるさとをこわしています


ふるさとをこわしています
ふるさとをこわしています
あたためた手で
かけだした足で
かなしんだ声で
だれにもとられたくない
ふるさとをこわしています

あさには虹ができません
よるには灯りがつきません
雨戸を開け閉めする音も
庭を掃く匂いも
訪れる人の気配も
あたりまえの一日が
息を潜めて通りすぎます

ここはふるさとなのです
散っていった時間と
集まってきた記憶の
阿吽の呼吸がある
区切られたバトンゾーン
今まで途切れることのない
手渡しの名残りなのです

ふるさとをこわしています
ふるさとをこわしています
もうすぐ形がなくなって
だれにもかえりみられない
小さな更地が誕生します

冷たい風が吹きぬけるでしょう
こまかい影の刺さった
冬の陽だまりができるでしょう
不規則な水たまりが
知らん振りの空を映すでしょう

ふるさとをこわしています
ふるさとの手でこわしています
もうわたしのてのひらにしか
記念写真はのこせません











Copyright© 2017 yumegoro (shiawase no kijun)