***  3月の詩  ***

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 ドア


ドアがあった
明るい雨上がり
長く続く塀のまんなかに

遠くに見えたときから
どうしても確かめたかった
ついと前に立って
ノブに手をかけたときの感触
開くときに漏れてくる風

ここになぜドアがあるのだろう
今日の選択のひとつなのか
向こう側にはなにがあるのだろうか
明日の約束を知りたいから

わたしが求める勇気とは
魅力あるドアを見つけ
期待と不安の仮面をつけて
ドアのノブに
そっと手を伸ばすこと

ドアの向こうから
なにかが聞こえてくる
ドアの上から
海を思わせる空まで
のぞいている

生きてきたいままでの時間
すべての続きがこの先にある
そうとまで信じ込ませて

でも
ほんとうに
呼んでいるものは違うのだ

前に立って全力で開けたいドアは
わたしのなかにある
大きく重たいドアなのだから








3月の詩 ドア

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