***  10月の詩  ***

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 出会い


彦星と織姫だけではないのだ
祈りを呼ぶ出会いがあるのは

朝露とともに
ちょうになって舞いはじめた黄色い羽と
目覚めとともに
地中から一気に花を咲かせた真紅の花と

昨日には誰ひとりとて
その姿を見たものも
その姿を想うものも
その姿に微笑むものも
いなかったというのに

秋をおとなう風が耳元でうながす
見上げれば翼の形の雲がむかえる

でも出会いの瞬間の二人にとっては
お互いがそこにあればいいのだ

出会いとはふれあうことで開く魔法の扉
ちょうのくだであっても
花のおしべであっても
風の伝言であっても
あなたの叫びに似たことばでも

出会いはやわらかい
出会いは硬質な音がする
出会いは吸い取る
出会いは与え合う

そして
出会いは
だれにでも
どんなときにでも
生きていることをたしかめあう
嘘のない鏡なのだ







10月の詩 出会い

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