***  5月の詩  ***

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 藤の花


藤色の空を
しずかに
ゆっくりと
染み込ませて
その花は咲いた

風が呼ぶ
なつかしい
一年ぶりの再会に
風が呼ぶ
ほほをはさんで
いとおしむように

遠い憧れの
キラキラ光る瞳を
毎日の時間を
大切に
いつくしむように
その花は咲いた

天から授かった
いのちの花は
降りるように
大地をめざし
けれど
決して届かない中空で
その花を終え

だから聞いていてください
わたしの声を
だから感じていてください
わたしのいのちを

更紗のからだを
かさね
すりあわせ
初夏の緑のなかにも
埋もれることのない
たしかないのち

いつまでも
いつまでも
あなたにだけ響く音で
鳴らし続けますから

もういちど
藤色の空で
あなたに再会する
その日まで








5月の詩 藤の花

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