***  6月の詩  ***

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 アジサイ


泣きはらした空のまぶた
ハモニカの音がなでるなか
光るななめの糸が
六月の新緑を縫いつけてゆく

重いカサの柄を左手に持ちかえ
あいた右手の指のささくれ
ふとおとした視線の先に

まだ色づき浅い花びら
アジサイの花
南風の色に似た雨粒に包まれ

眠る小さな花鞠のなか
いくえにも重ねられた
いのちの時間

夢のかけらひとつにぎりしめ
虹のかけらひとつにぎりしめ

たとえだれの目にとまらなくても
こころの七変化をひとつひとつ
アジサイはアジサイのままに

たしかな自分の歩みであれば
進んでもいい
戻ってもいい
迷いながらでも
つまずきながらでも

こんどは雨がよく見える
アジサイの花とおなじ
空色の透きとおったカサを手に
歩いてみよう

わたしはわたしのままに








6月の詩 アジサイ

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