***  8月の詩  ***

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 入道雲


空があまりに高いから
背くらべをしたくなる
見慣れた山並みも遥か下に
ここまで高くなったのに

空があまりに青いから
まっ白ならば勝てるはず
輝く光をいっぱいに浴びて
いちばん美しくなったのに

空があまりに深いから
はちきれんばかりふくらます
風をもっと飲みこんで
おおいつくすほどになったのに

空があまりに静かだから
にぎやか騒ぎを引き起こす
満ちあふれるほどの稲光と雷鳴を
どうだというほど用意したのに

空があまりに無表情だから
持ってる気持ちを出してやる
ひびく恫喝と大粒の涙
だれも止めることはできないのに

ふと気がつくと
なにもない
自分自身のからだもない
力の限り大きくなって
いちばんになったつもりなのに

水たまりから見上げると
高く青い空がいる
葉っぱの上から見上げると
深く静かな空がいる

そしてじっと見ていると
ほほえむような空がいる








8月の詩 入道雲

8月の詩 入道雲

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