***  3月の詩  ***

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 荷物


部屋にほおりこんであるから
目立たない
ていねいに整理整頓してあれば
なおさら
気の利いた小物で飾れば
癒しの空間にすらなる

それでも背負いきれない
荷物には変わりない
背負いきれないからこそ
こうして隠すように陳列するのだ
時間をかけて飾るのだ

荷物のひとかたまりが
もし路上に置いてあれば
だれの目にもじゃまに映るのに
家という箱の中では
ひっそりとたたずむ座敷わらし

愛でるだけのうちはまだいいが
いつか執着して
こころの重石になってゆく

部屋にも
からだにも
こころにまでも
次から次へと荷物が積まれてゆく

はじめて来たときには
なにひとつなかったというのに
帰ってゆくときにも
なにひとつ背負っていけないのに

見ない振りをしてみようか
いっそ引越しをしてみようか
それでも荷物はふえてくる
だれかの手ですっぱりと
捨て去られるその日まで







3月の詩 荷物

3月の詩 荷物

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