***  3月の詩  ***

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 かどで


雛を送る日の卒業式
さ青の珪石を散りばめたまぶしさ
焼き付けられた時間の釉薬
君たちは最後の制服を
面映い笑顔にからませて動かす

襟や胸につけたバッジひとつ
昨日と明日をないまぜにして
それでもいちばんに輝く今日
だれも眠るものはいない

そうだとしてもそうかもしれないけど
先に生きたものたちは
少しでも高い樹に登り腰掛けて
見慣れたジグソーのピースを
ひとつひとつはめてゆこうとするのだが

君たちはパズルではない
まして絵を完成させるための
約束の形に切り抜かれたピースでもない

ものとものとを隔てている
境界線は思ったほど硬くはない
むしろ春先の雪の溶けて消え入るほど
やわらかくはかなく切ない

歌を送る日の卒業式
そう思ってこころの何かを封印しようと
これっぽっちも賢しげにしたら
せっかく見つけた銀の鍵を
目を瞑り後ろを向きはるか遠く
投げ捨ててしまう見当違い

アイルランドのヒースの丘
風を香りのように梳く犬の毛に
君たちは印刷された卒業の文字を
みくじのようにからませて
今度こそ珪石のきらめくカイトにのって
消えることのない故里をみつけてほしい








3月の詩 かどで

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