***  12月の詩  ***

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 一本の線


空いっぱいに風が吹いて
まだ四時だというのに
太陽は西に朱色の染みを残す

追いつくはずもない何連もの雲
もうあきらめて
ひっそりと溶け始めている

いちばん最後まで残る心配ごとは
いったいなんなのだろうか
お金のこと
食べること
そばにいるだれかのこと

くりかえし
くりかえし
際限のない愚痴のように
それでも人は生きつづけてゆく

もうやめにしよう
どこかでそうつぶやく声に
昨夜も今朝も夢の中でさえ
何回もうなずきながら

うまれでた入口から
かえりゆく出口まで
一直線だと
見たようなふりをして
黒い文字が綴られてゆく

二つの点に導かれる
遠くうねって続く一本の線
思い出すことができないほど
はるかなる一筆書き

風は細い隙間ほど
高い音を伝える
そういえばあなたの声は
ずいぶん澄んで
光を放つ群青のようだ








12月の詩 一本の線

12月の詩 一本の線

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