***  5月の詩  ***

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 あなたのつばさ


うつむくのなら水際に立て
水際に立って
ふと前を見よ
そこに映るあなたの確かな姿を

しゃがむのなら太陽を背にしてしゃがめ
太陽を背にして
目の前の乾いた地面を見よ
そこに刻まれるあなたの確かな輪郭を

立ち止まるのなら雨の路に向かえ
傘を甲羅のように背負い
足元に濡れる色のにじみを見よ
そこにうつろうあなたの確かな色を

ああ風が吹く
空いっぱいの風が
これでもかこれでもかと吹きつける
まだ分からぬかまだ気づかぬかと
顔を頭を体まで持ち上げるように
くじけたかくれたこころを起こす

水面に波が立ち 姿が消えても
太陽が雲に隠れ 影が地面に溶けても
夕暮れが色を奪い 灰色に塗られても
あなたはなくしたわけではない
見失って忘れたわけでもない
ただかげろうのように
ただゆらりと揺れて

その確かめるもの
いつも背負うもの
決してなくならないもの
あなたといういのちの背中に生えている
おおきなおおきな
ひとくみのかがやくつばさ

ほら 水鏡はまた映し出す
ほら 明るい太陽はくっきりと影を刻む
ほら 色は音もなく戻ってくる








5月の詩 あなたのつばさ

5月の詩 あなたのつばさ

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