***  3月の詩  ***

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 役割


大風で折れてしまった枝
もう芽吹くこともないのだろうか

春を待つ空はどこまでも青
白い雲さえ浮かべない

枝は生きていた
いや
いまも生きているはず
まとった樹皮は生きてきた時間

残った枝の形は生きてきたあかし
誇りを捨てない個性

枝としての役割は終わった
のだろうか
樹にとって必要なくなった
のだろうか

だれもがそ知らぬ顔をして
どこかで求めている
決して手放したがらない
役割

演じる舞台から
はずされてしまうのを
いのちの終わりのように怖れ
憑かれたように端役を求める

でもどうだろう
この枝の不思議な落ち着きは
悲しむことなどどこにあろう
この堂々とした屍のようなうつわは

芽吹くだけがいのちではない
ここにあることだけもいのちなのだ

大風よ
役割を吹き飛ばした大風よ
わたしもまっすぐわたしに帰ろう









3月の詩 役割

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