***  5月の詩  ***

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 出窓ねこ


夕暮れ路地の美容院
いつものようにみあげると
二階の出窓にきみはいる
部屋のあかりをスポットに
ふわふわ毛並みかがやかせ
ちいさくないたかなかないか
めをほそめたかつぶったか

お店はもうすぐ店じまい
いまはすっかり陽は落ちて
群青色がせまるころ
どこかあかりもひと恋し
きみは出窓にねそべって
あすの天気をうらなうか
月夜のゆめをうらなうか

ふとたちどまる影なんて
このわたししかいないはず
それでもじっとみあげれば
つられてみあげる散歩犬
それにしてもいい香り
目覚めたバラは眠らない
寄り添う香りのうたすこし
まどいの風にのせたなら

夕暮れ路地の美容院
まもなく店は灯を落とし
きみの名をよぶたかいこえ
きみの名をよぶひくいこえ
二階の出窓のふわりねこ
おおきなのびをひとつして
さてさてこれからおでかけか
それともドレスのお手入れか

すっとひかれたカーテンに
おきざり街灯ただひとつ
一瞬止まった音たちが
ぬきあしさしあし背に回る
ここはわたしもねこになり
路地の抜け道帰ろうか









5月の詩 出窓ねこ

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