***  10月の詩  ***

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 招待状


ある日
招待状がやってくる
あなたの
母になる人にやってくる
まっしろな
ふわふわの招待状
日時も場所も時間も伏せてある

もしかしたら
あなたの母になる人も
初めは気づかなかったのだろう

そしてあなたは
まっしろな招待状とともに
この世に生まれた

まっしろな招待状には
ひとつずつかみしめるように
文字が刻まれてゆく
あなたのかたちと鼓動と
あなたの未来への名前を

まだ余白が多い
晴れた秋空のような招待状に
あなたが大きくなるにつれ
ほら書きこみがつぎつぎと
笑いの数 涙の跡
出会いの光 別れの影

余白がいっぱいになって
書きこめなくなったある日
見なれた文字たちが離れてゆく
消えるのではなく
あなたのまわりの人の記憶に
寄り添うように染みる

まっしろな招待状をもって
あなたは新たな旅にでかける
招待状を受け取る
その人が見つかるまで









10月の詩 招待状

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