***  11月の詩  ***

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 咲く


咲く
ほころびかけた蕾の
その前にたたずむ膝小僧

咲く
生まれたばかりの子の
やわらかなビブラートの泣き声

咲く
つなぎとめる記憶の
どこまでもつややかな色彩

わたしは 咲くのを見たよ
わたしも 咲くのを見たよ

羽がボロボロのモンシロチョウ
その影を鱗粉のように散らして
11月の陽ざしが風を呼ぶ

瞳に開かれた写真集のとびら
咲き乱れることばは
枯れて外に逃げる闇
飲み続けることで
張る乳が作り出す仮面の頬

咲けよ
咲けよ
唇のすきまから漏れてくる
乳白色の一筋の戯れ歌

たしかに 咲くのを見たよ
触れずに 咲くのを見たよ

咲く
発芽したばかりの
緑の指先からもう知っている

咲く
深い深いまなざし
100日も100年も変わらぬ深淵









11月の詩 咲く

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