***  3月の詩  ***

戻る


 くもりぞら


早春のくもりぞらが
 好き
何種類もの絵の具を混ぜ合わせて
グレーになったそらの色が
 好き

そっけないくもりぞらが
 好き
呼んでもなにも答えないけれど
ひそひそと聞こえる声が
 好き

さわれるかどうかのくもりぞらが
 好き
はるか高いところにだけじゃない
のばした指先からも始まる空が
 好き

どこか近寄りがたいくもりぞら
ひとみしりをするくもりぞら
忘れてしまっても
しらんぷりしていても
ふるさとのようなくもりぞら

いつかすっと雲が溶け
めまいのするような青になったら
まぶしい笑顔とともに
忘れさられてしまうくもりぞら

傘のすき間から顔を出しても
よけてとおりすぎる
水たまりの奥にしか
気づかれないくもりぞら

ふと寄り添いたいくもりぞらが
 好き
いつもどこかで信じている
温もる母の背中のような
早春のくもりぞらが
 好き









3月の詩 くもりぞら

Copyright© 2019 yumegoro (shiawase no kijun)