***  6月の詩  ***

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 六月色


灰色の空と
湿った風におおわれて
六月は
どこまでも無愛想

探すものは
地図に立つピンに似て
たどり着いても
目印などなにもない

日常のなかの混沌は
だれが演出したのだろう
本物と贋作のパッチワーク
落札のないオークション

保護色の宝の箱を探せ
輝くことは目印ではない
眠りについた時間
湿ったカメレオンの眼

だれかが故意に
隠そうとすることもなく
だれかが入念に
わなを仕掛けたこともない

髪を触るように軽く
装う金の箔のように薄く
難解なパズルの鍵は
踊るデッサンへの擬態

できることはただひとつ
見つけたら立ち止まり
宝の箱だと信じて
六月色に触れること

その瞬間に
紫陽花の花が開くように
わたし自身が
そのまま六月色の宝の箱









六月の詩 六月色

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