***  2月の詩  ***

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 立春


記章のような白い窓
吸い込まれる先は春の野

少し疲れた足が立ち止まる
香りではない
誘われたのはまばゆさ
降ってくる無数の問いかけのなかの
たったひとつの定型

飛んでゆきたくてうずうずしていた
はまるための入り口をさがしていた

へその奥からうずくもの
だれかがこねるように呼んでいる
時間を超えて
順序を超えて
光に縁どられた道標が誘う
右への道は明日への期待で埋められ
左への道は昨日の罪が惑わせる

歩いているのは
止まりかけた独楽たちだけ
川に落ちそうによろけては
窓の下を無表情で通り過ぎてゆく

節分の次の日は立春だから覚えて
その声が誰かだけは忘れない
さあ窓を開けよう
さあ窓を開けよう
なくした故郷に忍びこむために









2月の詩 立春

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