***  3月の詩  ***

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 声


どこかで声がする
やわらかな色の衣のむこう
それは呼んでいるのか
それとも歌っているのか

声はどこかへ消えてゆく
とどめるすべはない
けれど聞いた声は
わたしのこころに残る

欲しいものを得るために
収集する必要はない
見て聞いて触れて
わたしのなかにおけばいい

すぐれた輝きに触れたとき
抱かれて同化するように
そっといのちの布で包めば
わたしだけの宝物になる

声はもう消えることはない
たとえ忘れたとしても
わたしのこころのなかで
ゆっくりと熟成される

どこかからやってきて
どこかへと帰ってゆく
そのわずかのあいだ
出会う声たちが愛おしい











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