***  2月の詩  ***

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 いっぱい


まっすぐに水仙がほほえみました
鳥のさえずりもこぼれてきました
凍える風は両手の指を赤くしますが
かたい木の芽にはみみうちします

小さな子どもの声がはじけています
少し離れて猫が鳴いてついています
家をつくる音を郵便バイクが追います
リズムを探す太鼓が危なげに鳴ります

大きな樹にからだをあずけます
見上げると枝だけのすきまに蒼空
首が痛くなって足元を見ます
太い太い根がぶるんと描く弧

胸に飛びこむ光の問いが次々に刺さり
はじける答えがひろがってゆきます
伸びをしながら血管が広がりはじめ
なにかを受け取ってどくんと打ちます

わたしはわたしだけでいっぱいです
わたしの生まれ育っている宇宙は
わたしの呼吸だけででいっぱいです
昼でも満ち溢れる星でいっぱいです

閉じたまぶたはオレンジの海です
ここにわたしの部屋を作りましょう
まぶたの窓を開けば旅が再開します
わたしだけの道が涙からあふれます









2月の詩 いっぱい

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