***  5月の詩  ***

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 五月の落書き


透明な指先をのばす
透明な爪をのばす
腕を大きく大きく振って
無限のカンバスに描く

いっそ腕も消えてしまえ
からだも頭も消えてしまえ
呼吸まで透明にして
皐月の空を飛び回る

飛行機雲に沿ってゆく
何本も何本も線の練習
長く長くまっすぐに
抱きしめる線とも平行に

南風がことばをかける
潮の香りがくるっとかじる
描いた絵もすすっとおどる
髪の先から光がすべる

くすぐったい時間のカーテン
とまどうように開いてゆく
まだ見えないからだの奥が
うふふふふと揺れてきた

さあそろそろ見えるころ
わたしの描く いまはなに
じっと見つめていればいい
のびゆく線 落書きはなに









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