五月の落書き 透明な指先をのばす 透明な爪をのばす 腕を大きく大きく振って 無限のカンバスに描く いっそ腕も消えてしまえ からだも頭も消えてしまえ 呼吸まで透明にして 皐月の空を飛び回る 飛行機雲に沿ってゆく 何本も何本も線の練習 長く長くまっすぐに 抱きしめる線とも平行に 南風がことばをかける 潮の香りがくるっとかじる 描いた絵もすすっとおどる 髪の先から光がすべる くすぐったい時間のカーテン とまどうように開いてゆく まだ見えないからだの奥が うふふふふと揺れてきた さあそろそろ見えるころ わたしの描く いまはなに じっと見つめていればいい のびゆく線 落書きはなに |
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